茄子がままに

週末の山遊び、街遊び、自転車遊びのこと。ホームマウンテンは六甲山です。

兵庫縦断スピードハイク(2019/11/05)

新田次郎の小説『孤高の人』を読んだのは確か2年前だっただろうか。

神戸市が主催する六甲全山縦走大会を初めて完歩して間もないころだった。

加藤文太郎” 小説を読み終えてからしばらく、その名前が頭の中から離れなかった。

神戸の三菱内燃機で製図修行生として入社した彼に、同じく神戸の高専で機械工学を学んでいる私は、エンジニアを志していること、性格が内向的であること、六甲山を頻繁に歩いていること、などの共通点を見つけ勝手に親近感を抱いた。

初めての六甲全縦を13時間かけて歩いところ、彼は約半分の7時間で歩いた。それもまだ登山道が十分に整備されていない時代の話だ。

さらに宝塚から和田岬の社寮まで歩いて帰り、翌日は普段通り出勤したというから驚きである。その後、彼は厳冬期の北アルプス縦走など数々の山岳記録を打ち立てる。

そんな加藤文太郎は、土日休みを使って神戸から浜坂へ歩いて帰省したという。その逸話に倣って、同じように神戸から浜坂へ兵庫を縦断しようと半年前くらいから計画を立てていた。

そんな折に知ったのが「拝啓 加藤文太郎 兵庫縦断スピードハイク」という大会。

今まで4回開催されたこの大会も趣旨は同じで、神戸ー浜坂を48時間以内で踏破しなければならない。私もこの大会のルールに準じて行うことにした。大会ホームページに参戦記録やコースマップが載っていて非常に参考になった。

この場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございました!

兵庫縦断に用意した装備は以下の通りです。

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・ザック:OMM アドベンチャーライト20

・シューズ:ニューバランス ハンゾーT

・マット:エバニュー EXPマットUL 99

シュラフ:sol エスケープヴィヴィ

・ポール:モンベル ULフォールディングポール

・Tシャツ:白馬堂 六甲Tシャツ 

・ハーフパンツ:ユニクロの安いやつ

・パンツ:ユニクロ エアリズム×2

・キャップ:workrown

モンベル ウルトラライトシェル

モンベル ライトシェル

ユニクロ ULダウンジャケット

・ライト:モンベル パワーライトヘッドランプ、

・レインジャケット:モンベル バーサライトジャケット

・レインパンツ:モンベル レイントレック

・カーフ:ザムスト

・長ズボン:モンベル サイクルライニングパンツ

・ボトル:自転車用550mlの2本

・ファーストエイド:テーピング、ロキソニン錠剤、サバイバルシート、絆創膏、湿布、手回し充電のハンドライト、ティッシュ、コムラケア、ワセリン

・その他:モバイルバッテリー、ケーブル、乾電池、手拭い、行動食、手袋、ネックウォーマー

 

1日目(11/5)

06:17 三菱重工 神戸造船所

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11月の早朝は寒い。しかし走ると暑くなるので最初から半袖半ズボンに。手袋とカーフが丁度いい防寒になる。7分/kmくらいのペースで高取山へ向かう。

07:25 高取山

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高取山は彼が愛した場所の一つ。六甲山系の中でもかなり展望がいい。低山だがパノラマが広がり神戸の街が見渡せる。登山口が分かりづらいので注意。

高取山を降りて押部谷まで来ると道が分かりやすくなる。

10:30 志染駅

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ここら辺で約30kmだが、若干脚に疲労を感じる。先が思いやられる笑 早歩きにシフトチェンジ。

12:57 小野町駅

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水面輝く加古川と、のんびり田舎道を走る加古川線の列車を横目に河川敷を歩く。とても気持ちがいい。

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14:30 鶉野飛行場

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美しい田畑が広がり本当に気持ちが晴れ晴れする。クラスメイトでこの辺に住んでる子がいるのだが、遠いのに毎日ちゃんと登校してて偉いなぁ。

18:05 甘池駅

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福崎から甘池まで播但線沿いに歩いたが、交通量が多い上に道幅は狭く真っ暗だったので危なかった。ここで約70km地点。

21:00 道の駅 銀の馬車道 神河

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朝来市に入ってから標高も上がり気温が落ち込み始める。気温は7度くらいだった。

23:00 生野駅

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ここでようやく全行程の半分。和田岬から約95km。東側の待合室は閉まっていたが西側は空いていた。それを知らず、出来るだけ着込んで外でエスケープヴィヴィに包まって仮眠しようとしたが、寒すぎて2時間も寝れない。さらに寒さのせいで足の筋肉が固まってガチガチに。

寒いときは下手に寝るより動き続けて、気温が高い日中に寝るのも策かもしれない。

西側にローソンがあるのでそこで暖をとることに。

 

2日目(11/6)

02:15 ローソン生野インター店 出発

ここから55km離れたローソン養父万久里店まで補給地点がないので食料を買い込む。トイレも少ないので注意。とにかく寒い。朝来市養父市の市境となっている上八代では気温3度。

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養父市に入ってからは、景色が変わらず地獄だった。景色は綺麗だが、楽しむ余裕もないほど疲労と眠気が襲う。この辺りではバスの待合室が至る所にあるので仮眠する場所には困らない。

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とにかく歩き続けた。記憶はあまりない。

14:30 ローソン養父万久里店

ようやく生野以来のコンビニ。40分ほど仮眠をとる。

ハチ高原へ続く道をしばらく歩くと氷ノ山が見えてくる。加藤文太郎は氷ノ山のことを兵庫槍と呼んでいたっけ。

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その後9号線に合流し、北上する。ここからトンネルが連続するが、どのトンネルも歩道があるので、コースマップに書いてある迂回路は通らなくてもよい。ただし歩道は狭いので注意は必要。

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17:05 道の駅 ハチ北

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田舎の夕暮れってめっちゃ怖くないですか?夜より怖い。なんでだろう。

村岡トンネルをしてローソン香美町和田店にて休憩。下りでちょっと飛ばしすぎたのか、脚がそろそろ限界に。太ももがつりかけてきたのでコムラケアを飲んで様子見。

コインスナックふじから峠道を歩くが、この道が本当にしんどかった。まず山の中で真っ暗で精神的にやられる。すごく不安になる。そして勾配がまあまあきつい。つりかけの足が悲鳴をあげ、ポールを使ってなんとか歩く。

湯村カントリーまでやたら長く感じた。

23:50 新温泉町

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眠気がピークに達する。歩きながら寝てた。知らぬ間に景色が変わってる恐怖。そして獣の気配。キョエーーー!という甲高い鳴き声の主が鹿だとわかったのはこの時が初めて。鹿ってこんな風に鳴くんだ。道路脇の林でガサガサって走り去っていくもんやから怖い怖い。身体も精神もボロボロだった。

3日目(11/7)

02:20 湯村温泉

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やっと人里に下りてこれてホッとする。人には明かりが必要だなぁとしみじみ思う。

浜坂まで残り10kmとなるが後10kmが果てしなく遠い。再び睡魔が襲い、歩いては止まって寝て、歩いては止まって寝て、全く進まない。

目を瞑りながら歩くという術を身につけて距離を稼ぐ。

当初36時間くらいで浜坂に着くだろうと思っていたが、48時間以内も怪しくなってきて焦る。

最後の力を振り絞り、歩いて歩いて歩いて、、

06:04 浜坂 県民サンビーチ

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兵庫縦断 完歩!!!!

泣きそうになった、今までで一番辛かった。

吹きすさぶ潮風と荒々しい波が日本海に到達したことを実感させた。この荒波に揉まれて加藤文太郎は逞しく成長していったのだろう。私もそんな彼に少しは近づけただろうか。

距離:184km

時間:47時間47分

獲得標高:3095m

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とにかく寒くて身体が冷え切っていたので、温泉を探すもどこも時間外。浜坂温泉保養荘という温泉施設だけ営業時間が書いてなかったので、藁をすがる思いで行ってみると、宿泊者だけ朝風呂が入れるそうで、日帰りの人は入れないとのこと… しかし私の様子を見かねた受付の方が特別に入浴を許可していただいた。本当に有り難かった。人の優しさが何よりも暖かった。ありがとうございました。

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観光できるような状態ではなかったので、入浴後は加藤文太郎のお墓詣りだけ行った。加藤文太郎記念図書館はあいにく休館日だったが、またこの地を訪れるだろうから、その時にまた来よう。f:id:massto0421:20191201225632j:image
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今までで一番タフなチャレンジでした。