ホール全体を震わすシューゲイザーの爆音は、私の身体の深部までも共振させる。その振動に耐えんと身体が強張るが、末端の震えは止まらない。ボーカルが加わることで爆音はさらなるエネルギーを持ち、容赦なく押し寄せてくる。気を抜けば奥から身体がボロボロと崩壊するのではないかという不安さえ頭をよぎる。ようやく一曲目「わたしたちへ」の演奏が終わると、私はへなへなと座席にもたれ掛かった。人生初のライブの一曲目は物理的な意味でも衝撃的だった。
“理想ばかりじゃ生きられないな”と訴えるように歌うカネコアヤノの生き様ならぬ歌い様には心底惚れ惚れする。これは音源よりもライブの方が圧倒的に実感できる。MCは無く、約1時間半にわたり淡々と歌い演奏し続けるバンド“カネコアヤノ”はロックそのものだ。私たちの日常に寄り添ってくれる優しい歌詞たちは、彼女らの口と手足を介して音となり、私たちの耳を通じて身体の奥に宿る。そして一定の時間が経つと、その音はタオルケットのように私たちの身体を包み、日常に潜む外敵から守ってくれることだろう。
【セットリスト】
- わたしたちへ
- カウボーイ
- 季節の果物
- 予感
- やさしいギター
- 春
- 眠れない
- 天使とスーパーカー
- 愛のままを
- りぼんのてほどき
- こんな日に限って
- 月明かり
- 気分
- もしも
- 車窓より
- 花ひらくまで
- 明け方
- グレープフルーツ
- 退屈な日々にさようならを
- タオルケットは穏やかな