読書
ボーカルの岸田さんは眼鏡を掛けていたし、靴ひもを結び直したり、アンコールの曲を決めてなくて相談しているあいだちょっと待たされたり、そういう日常と地続きの光景が含まれているからこそ、音楽によって何度ももたらされるカタルシスを特別なものとして…
自己紹介 神戸出身、堺在住の1999年生まれ。六甲山の麓で生まれ育ち、幼いころから親に連れられ六甲山へ。学生のころから始めたロードバイクをきっかけに六甲山の魅力に憑りつかれて入り浸るようになる。2020年に就職で堺に引っ越したが、週末になると神戸に…
三宮センター街のジュンク堂で又吉直樹の新作エッセイ集『月と散文』を買い、リューアルオープンしたての東遊園地のベンチに座ってページをめくる。春の陽気、通りぬける風、青々とした芝生、子供のはしゃぐ声。どこをどう切り取っても春の休日に相応しい和…
日々の暮らしに追われている時、もうひとつの別の時間が流れている。それを悠久の自然と言っても良いだろう。そのことを知ることができたなら、いや想像でも心の片隅に意識することができたなら、それは生きてゆくうえでひとつの力になるような気がするのだ…
テンションの上がらねえことに…パワー使ってる場合じゃねえ…! 講談社の人気漫画『宇宙兄弟』にて、帰還船のパラシュート展開システムエンジニアの、ピコ・ノートンという人物が登場します。冒頭のセリフは、親友の死に直面した若き日のピコが、人生の短さを…
ワーニャ伯父さん、生きていきましょう。 長い長い日々を、長い夜を生き抜きましょう。 運命が送ってよこす試練にじっと耐えるの。 安らぎはないかもしれないけれど、 ほかの人のために、今も、年をとってからも働きましょう。 そして私たちの最期がきたら、…
六月初めの常念乗越 残雪に輝く槍・穂高の稜線 標高三千メートル 豊かなカールの雪をめぐらす 中岳支稜に浮かぶ あでやかな 残雪の造型 右手にかざす扇に 岳の夏を呼び たゆとう袂に 稜線の春を送る あわただしく移りゆく 季節の谷間に ひそやかに 浮かび 舞…
たとえば青色と水色の間に何百種類もの色が存在するように、「寂しい」「悲しい」「切ない」の間に何百種類の感情の色彩があったとしたら。同じように、友達と恋人、恋人と家族、生活と仕事、その間に何百種類もの関係や状態の色があったとしたら。それは大…
初夏の訪れを予感させるような新緑の山中を、播但線の朱い列車はゴトゴトと走る。連休真っ只中だというのに、車内には地元の高校生でひしめき合っている。校名の刺繍が入った大きなカバンや、車両の天井に届きそうな薙刀らしき長物を持っている様子から、部…
運ばれてきたシーフード・ピザには「あなたの召し上がるピザは、当店の958,816枚目のピザです」という小さな紙片がついている。その数字の意味がしばらくのあいだうまく呑み込めない。958,816?僕はそこにいったいどのようなメッセージを読みとるべきなのだ…
生産至上主義に跳飛ばされて怪我をした、その後養生に、同期8人で但馬の城崎温泉へ出掛けた。踵の痛みが足底筋膜炎になるようであれば致命傷になりかねないが、そんな事はあるまいと医者に云われた。二三年で出なければ後は心配いらない、とにかく要心は肝心…
君が所帯を持ったことも、子供が生まれたことも、風の便りに聞きました。この世の中には、風の便りというものがあって、こちらがべつに求めることをしないでも、消息を聞かせてくれるものですね。なにげなく齎されたものがいちばんいい。どこかの国の古い諺…
昨日は午前中にタウンガイドを済ませ、午後からジュンク堂三宮店におもむいた。5階で開催される「阪神淡路大震災から27年」を語り継ぐトークイベントを聴くためだ。登壇者は年齢も境遇も異なる3人の方々。それぞれ立場が異なるなか、震災から27年目に思うこ…
「点と点のつきあい」 私はこのごろ、こう思う。 人は、点と点のつきあいでよいのだ。 全貌くまなく捉える線のつきあいでなくともよいのだ。自分にとっての、「その人」というだけでよいのではないか。 小さい一点だけの「真」でよい、それを通しての人とし…
高専に在学していたころは自転車競技部に所属しており、シマノ鈴鹿ロードレース、はりちゅうエンデューロ、堺浜クリテリウムといった市民レースでの入賞を目標に練習してきたわけだが、5年間の活動を経て分かったことは、どうも私はレースに向いていないらし…
実家のある本山の町内からは、どこにいても保久良山の鳥居と石灯籠がよく見える。少し開けた山の中腹にそれらは建っており、昼夜を問わずいつでも麓の町を静かに見守っていた。 保久良山は子供達にとって格好の遊び場だった。小学生の頃は友人とよく秘密基地…
今週は夜勤で、毎日残業をしていた。会社を出るころにはもうすっかり日が昇っていて、寮についてベッドに入っても中々眠れない日々が続いた。昨日に至っては1時間ほどしか眠れず、仕事中はたびたび意識が飛びかけたが、なんとか1週間を終えることができてホ…
新田次郎『孤高の人』で知られる加藤文太郎は、私が尊敬する人物の一人だ。その旨は兵庫縦断スピードハイク(2019/11/05) - 自転車で山、海へ行く に書いたので、ここでは割愛する。加藤文太郎は六甲全山縦走の先駆けとなり、その後も厳冬期のアルプス縦走…