2日目
この日は五色ヶ原から双六小屋まで縦走する予定。一番の山場はなんといっても薬師岳だろう。2年前に上高地から室堂まで縦走したときに一度同じ道を逆走しているが、薬師岳から五色ヶ原までかなり長かった印象がある。今度は同じ道を登らなければならないのかと思うと憂鬱になった。
2:00 五色ヶ原山荘 出発
天気は晴れ。星空が広がっている。越中沢岳までの上りは緩やかなのでウォーミングアップにちょうど良い。
3:28 越中沢岳
越中沢岳からスゴ乗越までの区間は岩場がわりかし多い。苦手意識のある区間だったが案外すんなり通過できた。夜間なのでところどころマーキングを見失ってしまうことがあった。
夜が明けてきた。スゴ乗越小屋から薬師岳に向かってる登山者のヘッドライトがチカチカと見えた。
5:24 スゴ乗越小屋
五色ヶ原から3時間10分で着く予定だったが14分超過。とはいえ今のペースがいっぱいいっぱいである。10分ほど休憩してから薬師岳へのアタックに向かった。
6:12 間山
7:22 北薬師岳
登りでは足が止まることが多くなった。とにかくしんどい。しんどいと言ってどうすることも出来ないのでただ歩くのみ。
北薬師岳から薬師岳の区間がまた長いのである。道もガレていてペースが上がらない。途中で心が折れてしまい20分ほど動けなくなった。道端に座り込んで景色を見ながら放心状態。
8:17 薬師岳
北薬師岳から薬師岳までのコースタイム42分に対して55分もかかってしまった。20分の休憩時間を除いてもほとんどコースタイムどおりのペースしか出せていない。
CT0.7のペースを維持して双六小屋に着くことはほぼ不可能に思われた。とりあえず日が暮れるまでに到着できればいいやと気持ちを切り替えて先を目指す。山場である薬師岳は超えたので後は惰性でなんとかなるだろう。
はるか先に槍ヶ岳の穂先が見える。まだまだ遠い。
8:45 薬師岳山荘
薬師岳を下りたところにある太郎平キャンプ場で水浴びをして幾分か元気になった。
10:05 太郎平小屋
太郎平は今回のコース上でもお気に入りの場所である。牧歌的な雰囲気があって長居したくなる。残念ながら時間が押してるのですぐに出発。
11:28 北ノ俣岳
北ノ俣岳から黒部五郎へ向かってる区間は眠気との闘い。だいたい出発から10時間経つと睡魔に襲われる傾向がある。単調な道が眠気を増長させる。
13:40 黒部五郎の肩
フラフラになりながら黒部五郎の肩に到着。今回はピークを踏まずに黒部五郎小舎へと向かう。どうでもいいが腹痛でかなりピンチだった。最悪その辺で用を足そうかとも考えたが後ろに人がいたので泣く泣く小屋を目指した。壮大な黒部五郎のカールも便意の前ではただの無機質な風景に過ぎなかった。
14:47 黒部五郎小舎
なんとか間に合い人権は保たれた。ここに小屋があってよかった。平民金子氏が保久良山で脂汗をかいた気持ちが少しだけ分かったが、本当にどうでもいい話である。
なんだかもう疲れ切ったので小屋の下で座り込んで補給食のじゃがりこを食べながら景色に見入っていた。双六小屋までもう少しだがCT0.7のペースを切ることができないのは明らかなので急ぐこともなかった。少しコースから外れるが、この先の三俣山荘で知り合いが働いてるので寄り道するのもいいなと思い予定を変更した。
この辺りは高山植物の宝庫。チングルマを始め、色とりどりの花が出迎えてくれる。周りには自分しかいないのでそれらを独り占めしながら贅沢な山歩きを楽しんだ。CTを気にするあまり山の自然を見過ごしてきたが、その必要はもうなくなった。
鷲羽岳が見えてきた。鷲が両翼を広げているような堂々たる山容である。あの山の麓に三俣山荘がある。
16:30 三俣山荘
三俣山荘に着くなりテントを設営した。時間的に双六小屋へ行く余裕もあったが、もういいやという気持ちだった。とにかくゆっくりと休憩したかった。
18時ごろから夜の喫茶が営業するとのことだったのでそれに合わせて山荘にお邪魔した。ここで働く知り合いの「huttea」さんは姫路で間借り営業をされているチャイ屋さんである。夏以外の季節はチャイ屋さんをして、夏になると山小屋で働いているそうだ。以前から将来の相談に乗ってもらってる姫路のフレームビルダーの「Aya bikes」さんに、山小屋で働きたいという話をしたら紹介していただいたのである。
チャイを注文している間、喫茶室の窓から夕陽を眺めた。こんな景色を見ながら(見る時間がないほど忙しいかもしれないが)働けるのはいいなと思った。チャイを飲みながらhutteaさんの山小屋話を聞かせてもらい楽しい時間を過ごせた。スパイスのおかげか芯から暖まるような感じがして、おかげで夜は短時間ながらもぐっすりと眠れた。