茄子がままに

週末の山遊び、街遊び、自転車遊びのこと。ホームマウンテンは六甲山です。

六月のパノラマ銀座縦走①(2023/06/17,18)

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松本駅西側のコンコースは北アルプスの山々が一望できるようにガラス張りになっている。大阪から夜行バスに乗って松本に着くとまず、このガラス張りの展望デッキを覗きに行くのが慣例となっている。この日もいつもと同じように北アルプスを拝みに駅へ向かった。6月中旬の山肌はまだ残雪が多く見られ、これから登るパノラマ銀座の稜線からのぞむ風景に期待は高まるばかりだった。新潟に住む友人Tと以前キャノンボールで知り合ったMさんを乗せた車が松本駅のロータリーに到着したと連絡が来たので階段を降りていった。

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6月中旬といえば梅雨真っ只中であり天気が心配されたが、この日は梅雨とは思えない晴天だった。穂高駅近くの無料駐車場に車を停めて登山の支度をするあいだも紺碧の空を眺めてはこれからの山行を想像して胸を高ならせた。穂高駅からは「中房線乗合バス」に乗って燕岳登山口にあたる中房温泉まで行く。このバスに乗ると決まって具志堅用高に似た愛想のいいおじさんが運転席に座っているのだが、今回は別の運転手だった。体調を崩されたのだろうかと少し心配になっていたが、中房温泉へ向かう道中、対向車線から来たすれ違いの乗合バスの運転席に例のおじさんが座っていて安心した。

9:40 中房温泉(1462m)

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今回は前述したように新潟在住の友人T、キャノンボールで知り合ったMさん、Mさんの登山仲間のKさん、そして自分の計4人でパーティを組んだ。アルプス山行は単独で行くことが多いので新鮮な感じがする。Kさんとは今回初めてお会いするがとても気さくな方ですぐに打ち解けられたと思う。Kさんに限らず登山やトレランで知り合う方々は気さくな方が多いように思う。
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合戦尾根は北アルプス三大急登の一つと言われているが、そこまでの上りではないと個人的に思う。しっかりと整備された登山道はとても歩きやすい。第一から第三ベンチまではCT0.7ほどのペースで登っていく。パノラマ銀座に行き慣れていることもあり自分が先頭を歩かせてもらったが、メンバーの体力も気にしながらの登高には少し苦労した。
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合戦小屋の手前あたりでパノラマ銀座(常念山脈)の稜線が見えてきた。谷筋に残る雪が美しい模様を描き出し、ついつい立ち止まって魅入ってしまう。6月中旬なので気温は低いだろうと思っていたが、晴天下では日光が燦々と降り注ぎ気温以上に暑く感じられる。

11:56 合戦小屋(2384m)
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合戦小屋では名物のスイカを注文した。一人で来るときはなかなか食べようと思わないので、こういう機会があると有難い。出てきたスイカは予想以上の大きさで食べ終えると満腹感を得られた。
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13:20 燕山荘(2699m)
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稜線上に建つ燕山荘まで来ると湯俣の谷筋を挟んで正面に裏銀座の山々を一望できる。人生で初めての北アルプス山行もまたパノラマ銀座の縦走だったが、この場所に立ったときの感動は未だに覚えている。今はもう同じような感動を得られないが、やはり北アルプスに来た実感が沸き嬉しかった。少し休憩したらザックを燕山荘にデポして燕岳山頂を目指す。
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イルカ岩で撮影会が始まった。Mさんが大きく口を開けてイルカを食べている様子。燕岳の山頂は記念写真の列ができていて10分ほど滞在することになった。私たちの後ろに並んでいた男性2人組に撮影をお願いして山頂をあとにする。あとでアルバムを見返すとインカメで男性二人組の自撮りが写っていた。やられた!
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CT0.8で計画したスケジュールに対し時間が押していたので燕山荘に戻ってから黙々と大天井岳を目指した。喜作レリーフの手前にある小ピークからは、大天井岳槍ヶ岳が双璧をなす構図が美しかった。
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喜作レリーフ切通岩は燕岳ー大天井岳間で唯一の鎖場。慎重に通過する。

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喜作レリーフを通過した後はいよいよ大天井岳に向かう最後の登りが待ち受けている。この登りはなかなか体力を削られるため、息を切らさない程度にゆっくり登るのが望ましい。とはいえ標高はすでに2800m近くありどうしても息が上がる。ときどき休憩しながら標高を上げていく。
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途中の雪渓はまだ残っているが燕山荘グループのスタッフさんが毎年ステップを作ってくれるためアイゼン無しでも問題なく歩ける。火照った顔や腕に雪をつけて冷やすと気持ちが良かった。
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17:15 大天荘(2902m)

少し遅くなってしまったが無事に幕営予定の大天荘に到着した。大天荘のテン場はわりかし広いが、この日はすでに飽和状態で場所を探すのに苦労した。かろうじて3張テントを建てられそうなスペースを見つけられたが、もう少しでも遅かったら危なかった。
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テントを設営し終えたら大天井岳の山頂へ向かった。大天荘から山頂までは徒歩10分ほどで着く。標高2992mの山頂からはこれまで歩いてきた道のりが見渡せる。そしてなんといってもここから眺める槍・穂高連峰の佇まいは素晴らしい。この景色を見たいがために何度も何度も常念山脈に足を運んでしまうのだ。

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また振り返ると稜線上にポツンと建つ大天荘の赤い屋根が旅情をそそるのである。これまで何度もアルプス山行を重ねてきたが未だに山小屋に宿泊したことはない。いつかまたしゅくはくしてみたい。なんなら住み込みで働くのも良いだろう。最近はそのようなちょっとした野心を抱えながら日々を送っている。
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テン場に戻ってからはお楽しみの晩酌が始まった。Mさんは炒め物を振る舞ってくださり、飲んべえのKさんは大量に酒類を持ち込んでいた。どうりでザックが大きいわけである。Tは新潟の地酒を。これがまた美味しかった。私は高速道路のサービスエリアで調達した紅ショウガ天チップスを開ける。ビールによく合い美味しい。f:id:massto0421:20231003072544j:image

日が沈み始めると標高2900mの稜線上には冷たい風が吹く。防寒着を着込んで晩酌を続けていたがそれでも寒さには耐えられず、日が沈みきる前にそれぞれ床についた。テントの中は暖かく快適だった。風がテントを靡かせぱたぱたと音を鳴らす。目を瞑ってその音を聴くと、あぁ今まさに山の中にいるんだなという実感が湧いて嬉しくなる。そんなことを思っているうちに眠りに落ちていた
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