茄子がままに

週末の山遊び、街遊び、自転車遊びのこと。ホームマウンテンは六甲山です。

北アルプス縦走(富山湾ー上高地)①(2023/08/12〜14)

日数の取れる盆休みは南アルプス縦走(市ノ瀬ー畑薙ダム)を計画していたが、ちょうど静岡あたりに台風が接近していて悪天候が予想されたため北アルプス縦走に変更した。

コースはTJARと同じにしたが、ミラージュランドを出発し上高地をゴールとすると3日目のCTが20時間以上にならないので、ゴール地点を新島々に変更して計画を立てた。1日目はミラージュランドから五色ヶ原。2日目は五色ヶ原から双六小屋。3日目は双六小屋から徳本峠を経て新島々という具合である。

いつもの如く富山まで高速バスを利用。ミラージュランドを出発するのは深夜0時だが、高速バスは夕方に富山駅に着く。暇なので駅の近くにある富岩環水公園に行き、芝生に寝転んで少しだけ仮眠した。

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18時ごろ富山駅の近くの吉野家でご飯を食べてから、ミラージュランド最寄駅の西魚津駅へ向かった。西魚津で一緒に降りた方は日帰りゼロ剱をするそうで、海岸まで行ってお見送りをした。また後で会いましょうと声をかけ合った。
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お見送りしたのが22時ごろなので出発まであと2時間ある。することもないのでミラージュランドから少し離れたところにある広場のベンチに横になって仮眠した。といってもこれから始まる山行にやや興奮気味だったのでほとんど寝れなかった。

0:00 ミラージュランド 出発

日本海をタッチしてスタート。空は星がよく見える。なんなら流れ星も見えた。気温はあまり高くなくて走りやすそうな感じだった。
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ミラージュランドの敷地を抜けて早月川の河川敷の道に出る。基本このまま川沿いに進めばいいが、一応Googleマップで最短経路を調べながら進んでいった。河川敷は全く街灯がないのでヘッドライト必須である。ザックの重量は水1.5L込みで8kgぐらい。OMMのadventure light20で行きたかったが3日分の補給食は入らなかったのでウルトラスパイアのEPIC2.0にした。こちらは一応30Lの容量である。TJARでも使用している選手は多い。

夏のアルプス山行に持っていく装備類がほぼ固定されて分かってきたことは、20Lほどのザックを使用したければテントはストックシェルター必須、また行動スピードも北アルプス区間を2日で完済できるくらいでないと補給食の量的に厳しい。山中での行動時間が長ければ長いほど、必然的に行動食の量は多くないとダメなのでザックの容量と重量は増していく。
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一つ目の自販機を発見。ミラージュから9kmほど先のタテヤマファーム早月農場の前に設置されてある。眠気覚ましに缶コーヒーを購入。だんだんと楽しくなってきた。
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馬場島まで12kmの標識。林道のような道なので道路脇からクマが出てきそうな雰囲気。スマホでカネコアヤノを爆音で流して歌いながら通過。
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馬場島まであと8km。そういえば馬場島近くにあった自販機は撤去されているらしく、登山道に入るまでにどこで水を補給するか悩んだ。馬場島のキャンプ場には水道があるが、スタート時に見送ったゼロ剱の方から、生水で飲むのはやめた方がいいですよと情報をもらっていた。とはいえ馬場島の近くに他に補給できる場所もなさそうなので、最悪、馬場島キャンプ場で補給する算段だった。
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馬場島が近づくにつれて夜が明けてきた。空を見上げると剱岳の稜線のシルエットが浮かんでいた。
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4:40 馬場島 

スタートから4時間40分。ペースはキロ9分30秒ぐらい。まずまずのペースといったところ。馬場島から10kmほど手前にGoogleマップ上で「水くみ場」と表示されている場所があり、恐らくそこが入山前の最後の補給地点になりそうだった。ただ何を思ったかそこでは補給をスルーしてしまった。馬場島キャンプ場の水道も生水では飲めなさそうだったので、ボトルに入っている300mlの水を頼りに早月小屋まで粘ることにした。今思うと冷静な判断ができていない。“試練と憧れ”やっと拝めた。
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水がほとんどないのでザックが軽く、CT0.5ほどのペースで進んでいた。300mlの水は早月小屋まで保つようにちびちびと舐めるようにして飲んだ。ずんずんと登っていると未開封のゼリー飲料が落ちていた。地獄に仏とはこのことよ、と思いながらありがたく頂戴した。
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ゼリー飲料も水も飲み尽くし、もうすぐ干からびてしまうというところで早月小屋が見えた。
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7:17 早月小屋(2200m)
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TJARのルールでは山小屋で水以外の飲食物を買うのは禁止されている。できるだけこのルールに則って行動するつもりだったが、この時ばかりは水分以外の栄養素を身体が求めていた。ポカリとソルティライチを購入。身体に染み渡る。さて早月尾根の核心部はこれから。斜度はさらに増していき、カニのハサミといった難所も現れるので再度気を引き締める。
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道中に咲いていたチングルマは既に花から綿毛の姿に変わっていた。個人的に綿毛のほうがイソギンチャクみたいで可愛らしくて好きである。
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いまいちカニのハサミがどこか分からないが鎖場は沢山あった。ただし剱岳の最もポピュラーなコースである別山尾根に比べると難易度は低い。ただし体力的にはかなりキツかった。
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9:40 剱岳(2999m)
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馬場島から5時間ちょうど。ペースはCT0.55くらい。まずまず。去年、友人たちと剱岳へ初登頂したのが懐かしい。ちょうど今ごろが登頂ピークの時間帯なのか、山頂は人でごった返し状態だった。登頂の感慨もへったくれもありゃしない。
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それでも景色は素晴らしいもので5分ほど360度の大パノラマを楽しんだ。さてこれから別山尾根を下る。一番の難所とされるカニのヨコバイが控えていたりと、ここからが本番である。
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写真のとおり下りは大渋滞。足休めと思って焦らないことを意識した。
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カニのヨコバイなどの難所では待ち時間が発生するので高山植物の撮影タイム。岩の隙間に咲くイワギキョウやチングルマ。その力強く逞しい姿に心が動く。
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11:40 剣山荘
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無事に下りてこられてホッとする。剣山荘の入り口近くには水がジャバジャバと放水されてるので、ボトルに入れて頭から被ったりした。
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さて休む間もなく先へと向かうが、この辺りでちょうど眠気のピークがきた。ミラージュランドを出発して12時間が経とうとしていたので無理もない。半分目を瞑りながら歩いていたら岩と岩の隙間に足を挟んで転倒。やっちまった…と思い立ち上がる。打撲程度で歩くぶんには支障なく助かったが、このまま歩くのは危険と思われた。
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13:03 劔御前小屋()
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あまりにも眠いのでザックを枕にしてその辺に寝転んだ。手拭いをアイマスク代わりにして10分ほど仮眠。再出発したが眠気はあまり変わらず、疲労も相まって全くスピードが上がらない。
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14:57 大汝休憩所
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去年、剱岳へ来たときは前日に立山三山を縦走していた。ちょうど大汝あたりで雨に降られたので、この休憩所で雨宿りをした。そのとき対応してくださったご主人がかなり個性的な方で今でもよく覚えている。また利用したいが今回はお預け。
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15:47 一の越山荘

写真は撮り忘れた。ここでも休憩はせず先へ進む。浄土山がやけに大きく感じた。
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鬼岳東面の雪渓は跡形もなく消えていた。2年前、同じ時期に通過したときはまだまだ雪が残っており慎重に歩いたのだが。どこの山域でも雪がないため水不足が深刻なようである。
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17:40 獅子岳

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獅子岳に着いた時点でCT0.7の計画に対して25分遅れていた。ここからさらにペースを上げて巻き返すのはかなり厳しい状況である。

ザラ峠へ向かってる最中で雲海が見られた。まるで雲の中を歩いているようで、写真などを夢中になって撮っていると否応にも歩くペースが落ちてしまう。
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ザラ峠を越えて五色ヶ原へと続く木道を歩いていると正面に巨大な山が現れた。あれが2日目最大の山場となる薬師岳である。
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19:00 五色ヶ原山荘
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ミラージュランドから五色ヶ原までのコースタイムは26時間である。(ミラージュ〜馬場島:7時間30分+馬場島〜五色ヶ原:18時間30分)CT0.7だと18時間12分。すなわち18:12分に五色ヶ原に着いておかなければならなかったが50分ほど超過してしまった。やはり宿題の基準は甘くないようである。

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