茄子がままに

週末の山遊び、街遊び、自転車遊びのこと。ホームマウンテンは六甲山です。

10月初旬のパノラマ銀座①(2023/10/4,5)

北アルプスの紅葉を観たい衝動に駆られて性懲りもなく常念山脈へとやって来た。北アルプスで最もメジャーな紅葉スポットといえば三段紅葉で有名な涸沢カールだが、人気であればあるほど登山者の数も多くて興を削がれる。それに比べてここ常念山脈、具体的に言うと燕岳から蝶ヶ岳までのパノラマ銀座コースは、決して人気が無いわけではないが紅葉シーズンにわざわざ訪れる登山者は少ないだろう。お盆の北アルプス縦走以来スピードハイクにうんざりしていたので、ゆっくりと歩いてアルプスの自然を心ゆくまで堪能したかった。そのためには“静けさ”という要素が欠かせなかったのである。
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下界の安曇野ではしとしとと秋の雨が降っており山上の天気が心配されたが、稜線まで上がると晴れ間が見えた。いつもなら燕山荘から燕岳の山頂をピストンするが今回はやめておいた。その理由は今日の幕営地となる大天井岳で、槍穂高連峰を気の済むまで眺めたかったからである。それゆえに燕岳の山頂へは向かわずにそのまま大天井岳へと歩いていった。
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紅葉の時期にアルプスを訪れるのは初めてのことで、何度も歩いたこの道から見える景色もいつもとは違っていた。ハイマツは夏と変わらぬ濃い緑で白い岩肌を覆っているが、それに加えてウラジロナナカマドやダケカンバなどの高山植物が赤や黄色に色づき、鮮やかなモザイクを作り出していた。
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また稜線から山全体を俯瞰してみると、植生の垂直分散の様子がとても分かりやすい。標高が高いほど気温は低いのでその分、紅葉の進み具合も早くなる。特にこの3000m級の山が連なるアルプスにおいては顕著である。このように景色の移り変わりを目で見て感じられる場所は、アルプス以外で中々お目にかかれないだろう。
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大天荘の入り口近くにはウラジロナナカマドの赤い実がなっていた。燕山荘あたりでは晴れ間が見えていた空も、今は鈍色の雲で覆われている。晴れていれば槍・穂高連峰が一望できるはずのテント場からの景色も、今日は何も見えない。テントを設営してから大天荘の前にあるテーブルでカップラーメンを食べていると雨が降り出したので、完食するなりテントの中に戻った。

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夜にかけて風はさらに強くなっていった。テントの通気口からは風とともに雨が入り込みなかなか落ち着かない。そんな状況だったが大天荘に来たもう一つの目的を果たさねばならなかった。それは大天荘のランプ喫茶で特製のホットワインを飲むことである。山小屋に入ると暖かくてこのまま宿泊したい気持ちになった。照明が落とされた食堂のテーブルにはランプが置かれていてとても趣のある空間である。運ばれてきたホットワインはグラスに並々と注がれていて全部飲めるか心配だったが、果実酒のような飲み味でスイスイと飲めてしまう。温めてアルコールが少し抜けているのか、心配していたほど酔うこともなかった。
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大天荘の玄関に槍ヶ岳周辺の明日以降の天気予報が掲示されていた。確認すると、明日は冬型の気圧配置が強まり、午後からは雪が降るとのことだった。明後日にかけて常念山脈では5cmほど雪が積もるらしい。風もさらに強くなるようで、深夜0時の時点で風速15m/s、朝6時には22m/sということだった。岐阜側からの風は槍・穂高連峰にぶつかり、常念山脈に到達するころには少しマシになる傾向があるが、それでも酷い大荒れの予報である。明日、燕山荘に引き返して中房温泉に下山するか、このまま予定通り縦走して上高地まで歩き通すか、非常に判断が悩ましい事態に陥ってしまった。