茄子がままに

週末の山遊び、街遊び、自転車遊びのこと。ホームマウンテンは六甲山です。

裏銀座縦走②(2023/07/16,17)

裏銀座縦走2日目

3:00 双六小屋出発。相変わらず風は強くガスも濃い。双六岳の山頂周辺はなだらからな丘陵地帯のようになっているため、今日のようにガスが濃いと非常に道がわかりづらい。登山道沿いにポツポツと積まれているケルンに時折助けられながら、登山道を外れないように慎重に歩いた。

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4:20 双六岳(2859m)
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双六岳から三俣蓮華岳まではほぼ平坦路のため小走りで進む。空が明るくなり始めたものの依然としてガスは濃く、稜線に吹く風も強いままだった。景色が全く見えないので気分は沈みがちで、ただひたすら淡々と歩いていたが、丸山付近の雪渓にライチョウの姿が見られて少しだけ嬉しくなった。
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5:05 三俣蓮華岳(2840m)
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“三俣”という名前のとおり、この山頂は三つの山域の分岐点となっている。南側は自分が歩いてきた槍ヶ岳方面。西側は黒部五郎、薬師、立山へと北アルプスの主稜線が続く。今回進むのは東側の裏銀座方面である。

5:33 三俣山荘(2547m)
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双六小屋を出発してから2時間30分が経過した。双六小屋からのCTは約3時間なので80%ほどのタイム。毎回のことではあるが、やはり2日目になると一気にペースが落ちてしまう。睡眠の質が悪い、補給が足りていない、単純に脚力不足といった要因が挙げられるが恐らく全部なのだろう。三俣山荘では水だけ補給して先に進んだ。
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三俣山荘を出てすぐに立ちはだかるのは鷲羽岳。晴れていればその巨大な山塊に圧倒されるのであろうが、幸か不幸かガスで何も見えなかった。

6:27 鷲羽岳(2920m)
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百名山のなかでも人気のある山だが特に感動することもなく登頂した。山頂直下の青々とした鷲羽池も見てみたかったが次回にお預けとなった。今となっては何となく長くてキツい山だったなという薄い印象しか残っていない。
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それにしてもこのガスは一体いつまで滞留するのだろうか。槍ヶ岳を越えて稜線に出てから常に湿った風が顔を吹きつけていて気が滅入ってきた。しかしながら弱音を吐いてもこの現状を抜け出せるわけがない。ただ唯一できることといえば歩くのみである。鷲羽岳から1時間ほどして水晶小屋に到着した。水晶岳の山頂は縦走路から少し外れているためスルーしても良かったが折角の機会なのでピークを踏んでおきたかった。昨夏に水晶岳を訪れた友人から、水晶岳付近は滑りやすい岩場と聞いていたので慎重に歩いた。確かにところどころ鎖が現れて注意しなければならなかった。

7:52 水晶岳(2984m)
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ピークを踏んでから水晶小屋に引き返した。水晶小屋に戻ってから少し補給を取ることにした。冷えて固くなったチョコブラウニーは味がしなくて虚無感を助長させる。その土の塊のような固形物を水で流し込んでしばらく休んでいると、周囲の様子に変化が見られた。昨夜からずっと稜線を覆っていたガスが流れ出したのである。そして目前に裏銀座縦走路の先が現れた。水晶小屋で休んでいた他の登山者もおぉっと歓声が湧き、しばしの間その様子を見守っていた。
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雲間から覗く青い空を眺めつつ嬉々として先へ進んだ。先へ進みながら何度も水晶岳のほうを振り返った。風化が進む花崗岩が崩れて赤い山肌が露わになっていた。既視感のあるその赤い山肌は、燕岳から裏銀座方面を眺めると見られ馴染みのある赤色だった。
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野口五郎岳方面はハイマツの緑と花崗岩の白の紋様が美しい。北アルプスらしい華やかな光景である。
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9:00 東沢乗越(2734m)
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東沢乗越から野口五郎岳までは緩やかな登りが続く。男らしい名前とは対照的に優しそうな女性のような山容だった。
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10:20 野口五郎岳(2923m)
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山頂からは馴染みのある表銀座の山並みが見える。合戦尾根を越えて燕山荘に立ったとき、大きな谷を挟んで向こう側に見える裏銀座の山並みに衝撃を受けてから数年が経った。あのとき見ていた裏銀座の稜線に立っていると感慨深いものがあった。

10:30 野口五郎小屋(2869m)

青い屋根が特徴的な小屋である。
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三ツ岳から烏帽子小屋まではコマクサの群落があちこちにあって天国のようだった。コマクサの色や形は上品さと華やかさを両方備えており、高山植物の女王という呼び名に相応しい。f:id:massto0421:20231021085925j:imagef:id:massto0421:20231021085932j:image

烏帽子小屋近くのピーク三ツ岳からは、北アルプス三大急登のひとつであるブナ立尾根と、その下った先にある高瀬ダムが見えた。ある意味今回の行程のなかでラスボス的な存在である。
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12:12 烏帽子小屋(2526m)
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烏帽子小屋周辺はコマクサ以外の高山植物もいろいろ咲いていた。なかでも小屋前に咲くイワギキョウは圧巻だった。また、後から知ったのだが烏帽子小屋近くのコマクサの群落にはアルビノで白化した個体も咲いていたらしく悔やまれた。
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烏帽子小屋で最後の休憩をとってブナ立尾根の急下りに挑んだ。烏帽子小屋から高瀬ダムまで距離3.4km、標高差は1270mほど。なかなかの急登具合である。道は綺麗に整備されていたので思っていたよりかは下りやすくスイスイと進んだ。もちろん脚はそれなりの疲労具合で辛かった。
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13:49 ブナ立尾根取付きの濁沢まで下りてきた。1週間前にここが増水で渡れなかったと情報があったので少し心配していたが問題なく通行できた。f:id:massto0421:20231021085956j:image

高瀬ダムの建設作業用として掘られたと思われるトンネルを抜けると、、f:id:massto0421:20231021090005j:image

14:30 高瀬ダム(1272m)
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ここからは車道があるので4.5km先にある七倉山荘までタクシーで行けるが、電波は無いので高瀬ダムに設置されてる公衆電話を使ってタクシーを呼ぶシステムとなっている。先に降りてきていた4枚のパーティがちょうどタクシーの迎えが来ていて、さっさと下まで降りていった。疲れていたのでタクシーを使いたかったが、1人で乗ると料金が高くつくので歩くことにした。

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ここからはまたら我慢の時間。1300mほどの気温は下界とさほど変わらないので非常に暑い。昼過ぎの日光を浴びながらひたすら歩いた。硬いアスファルトの地面は疲れた脚にこたえた。f:id:massto0421:20231021090017j:image
15:07 七倉山荘(1060m)
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これにて今回の裏銀座縦走を終えた。縦走後の温泉、ご飯、ビールは欠かせない。幸せな気持ちに浸りながら、涼風が吹く山荘のテラスで補給食をつまみにビールを飲んだ。
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