茄子がままに

週末の山遊び、街遊び、自転車遊びのこと。ホームマウンテンは六甲山です。

OSJ KAMI100 参戦レポート(2021/11/5,6,7)

今年の本命レースとして位置付けていた「OSJ KAMI100」のレポートです。装備やレース内容だけでなく、宿泊や交通手段など次回参加される方の参考になればと思い、記憶が新しいうちに記録しておきます。f:id:massto0421:20211129010840j:image

コース概要

・距離:112km(37km × 3周) 

・累積標高:約6000m(2000m × 3周)

・特徴:一言で表すなら「走らされるコース」。獲得標高の数字だけ見ると急登が多そうな印象を受けるが、実際は緩やかな林道のアップダウンが多く、テクニカルな下りも殆どないので走りやすい。この走りやすさが実は危険で、112kmというロングレースにも関わらず、序盤から突っ込んでしまいオーバーペースに陥りやすい。従って完走を目指すランナーにとっては、ランとウォークのメリハリをつけることが攻略の鍵となってくる。しかし上位を狙うランナーに関しては、この攻略法は当てはまらない。冒頭で「走らされるコース」と表現したように、走力のあるランナーであれば、ほとんどの区間をランで突破できてしまう。つまり実力相応の順位を狙おうとすると、ウォークで脚を休ませる区間が少ないのである。上位10%未満に入った知人や、名の知れたランナーが口を揃えて「きつい」と評していたのは、このような理由が考えられる。ちなみに完走狙いで走るなら、登りは全歩き、平坦と下りはボチボチ(平坦のロードをキロ6〜7分くらいの強度で)走る、これで1周6時間前後で走り切れるので、余裕を持って完走できると思う。一つの目安にしていただければ幸いです。公式より引用↓OSJ KAMI 100 | OSJ TRAIL RUNNING RACE SERIES-POWER SPORTS

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コースの風景

写真は試走時のもの。兵庫県最高峰の氷ノ山を望みながら美しいススキの高原が広がる。

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装備

  • ザック:salomon advance skin8
  • シューズ:inov-8 TERRAULTRA270
  • 服装:半袖半パン、カーフスリーブ
  • ウインドブレーカー:Patagonia houdini jacket 
  • 防寒着(上)montbell ウルトラライトシェルジャケット
  • 防寒着(下):underarmor
  • レイン(上):montbell バーサライトジャケット
  • レイン(下):montbell レイントラッカーパンツ
  • ストック:montbell ULフォールディングポール
  • ヘッドライト:レッドレンザー neo8HR
  • その他:補給食、その他必携品、薬(ロキソニン、2-run)、モバイルバッテリー

補給食

ジェルはカフェイン摂取用のみ、他の補給食は基本的にいつも山に持っていく固形物と変わらない。バナナ、おにぎり、あんパン、チョコパン、バームクーヘン、ラムネ、トレイルミックス、羊羹、塩豆大福、プロテインバー、ジェル(カフェイン摂取用)以上。塩分少なめだがエイドで補う予定だったので問題なし。

自身の走力

フルマラソン:4時間18分(2019年 東神戸マラソン←信号ありの草レースです。)現在はおそらく3時間40分前後?

六甲全山縦走ベスト(塩尾寺下休憩所ー須磨浦公園):6時間16分

交通手段

試走時も本番も、行きは高速バスを利用した。受付がスタート前日なので、全但バスの12:20大阪発ー14:51福岡ハチ北口着の便がちょうどよい。福岡ハチ北口からハチ北高原の宿場街まで約4キロほどあるが、本番は宿の方が福岡ハチ北口のバス停まで送迎車を出してくださった。試走時は徒歩で移動したが、ランナーであれば4キロの道は苦ではないだろう。道中の長閑な風景を楽しみながら歩くのも悪くはない。

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帰りはバスとJR.。福岡ハチ北口からJR八鹿駅まで路線バスで移動し、鈍行で大阪まで帰る。バスの本数が少ないので要注意。全但バス鉢伏線の時刻表→15_akioka_20210401 (zentanbus.co.jp) 

帰りも高速バスを利用できるならそれに越したことはない。鉄道の場合、レース後は寝過ごしてしまう可能性が大いにある。

宿泊

試走時は「よなごや」さんスキー | よなごや | 日本 | ハチ北 (wixsite.com)

にお世話になった。ハチ北温泉のすぐそばにあるので、レース後温泉に寄るなら立地的に便利だ。ホームページには書かれていないがWi-Fiもしっかりあって不自由なことは無かった。料金は他のお宿と比べてもかなり抑えめなのが有難い。f:id:massto0421:20211129011241j:image
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本番は「さかえ」さん旅館 さかえ | ハチ北観光協会 (hachikita.jp)を利用。ランナーのために送迎車を準備してくださり、前述したバス停からだけでなく、デポ用のテント設営時や、レース当日の宿から会場までの送迎もしてくださって本当に助かった。余談だが、バス停から会場に向かう車中で2020年の秋キャノンで一緒に走ったランナーのげんやさんと再会できた。とても気さくな方で、お話してる内にレースの緊張感や不安感が薄れていった。またどこかの山でお会いできればと思う。話は戻るが、「さかえ」さんのオーナーさんのおもてなしの心遣いが素晴らしく感動した。内湯は温泉でそれだけでも最高なのだが、なんとレース中はランナーがいつ帰って来てもいいように、宿泊者限定で24時間温泉を開放してくださるという神対応。本当に助かりました。ありがとうございます。レース後に食事を提供してくださった(500円)↓f:id:massto0421:20211129011338j:image

テント設営

レース前日の18:15からデポジット用のテント設営がスタート。17:45くらいから設営場所前に待機してたがそんなに急ぐ必要はなかった。時間前に場所取りができないよう、しっかりバリケードが設置されていた。

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レース内容

【1周目】

楽しみと不安が入り混じる中、9:00にスタート。先頭集団が駆け足でゲレンデの急登を上がっていくのを遠くに眺めながらゲートをくぐる。浮き足立っていたのか、200mほど走ってからガーミンの計測し忘れに気づき、慌ててログを取り始める。予定タイムは1周目6時間、2周目7時間、3周目8時間の合計21時間という安直すぎる設定。とりあえず完走することを第一に考えていた。

f:id:massto0421:20211129011540j:image最初のトレイルを下って、急な登り返しに差し掛かる。心拍が190まで上がっており少しペースを抑えたいところだが、体感的にはそこまで辛くない。おそらく気温が高めなのと、動き始めて間もないことが起因しており、一時的なものと考えられる。とりあえずそのままのペースで進む。前方に以前六甲山で知り合ったBIGさんを発見。先を急いで声をかけたいが、ペースを乱すのも躊躇われたので一先ず現状維持。その後第一エイドの美方高原で無事に合流できた。ソロ参戦の場合やはり寂しさを感じるものだが、知り合いに会えたことでテンションが上がる。スタートしてから、完走できるか不安な気持ちが心の中を占めていたが、ここからずっと“楽しい”モードで走れるようになった。お喋りのお相手をしてくださったBIGさんには感謝です。f:id:massto0421:20211129011613j:image

後半の兎和野高原エリアへとつづく林道を抜けて、再び下りのトレイルに入る。10月中旬に試走したときは軽快に下れたのだが、当日は落ち葉が降り積もって地面の状況がわかりづらい。落ち葉の下に隠れた岩を踏まないように、すり足のような足運びで慎重に下る。

スタートしてから約3時間30分後、第3エイドの兎和野高原に到着した。ここにはコース上でS/F地点を除いて唯一自販機が3台設置されており、そのなかの1台ダイドーの自販機で「さらっとしぼったオレンジ」を購入。f:id:massto0421:20211129011743j:image

試走で訪れた時に見つけて、これは他のランナーと争奪戦になるなぁと勝手に予想していたが、“さらオレ”を買っていたのは自分だけで少し落胆した。補給食で持ってきた塩豆大福と合わせると、さながら淡河名物「豊助饅頭」のみかん大福のようで非常に美味しい。“さらオレ”に満足したところで兎和野高原を出発。木の殿堂まで気持ちのいいトレイルをしばらく走ると、瀞川山へと向かう最後の長い登りが待ち受けている。特別急な坂ではないが、ダラダラと九十九折りが続き、コース後半ということもあって気力・体力ともにジワジワと消耗される。一緒に登っていた方も「この登りいつまで続くんやろなぁ」と(内心嬉しそうに)愚痴をこぼしていた。

ようやく兎和野高原エリア入り口の林道に出てくる。あとは、瀞川山9合目から山頂まで若干の登りはあるにせよ、ほぼ平坦路と下りになる。脚に極力負担をかけないよう一定のリズムを刻みながら走るが、最後のゲレンデの下り坂は舗装されたアスファルトの道なので、かなり脚にダメージを負ってしまった。コース1番の難所と言っても過言ではない。後半のことも考えると、1周目、2周目は無理に走らなくてもいいかもしれない。

当初6時間で1周目を終える予定だったが、5時間22分で走り終える。抑えて走ったつもりだったが、それでも周りに流されてオーバーペースになってしまった。エイドで但馬牛入りのカレーライスを戴く。これがまた美味しくてたまらない。一気に平らげて、自分のデポジット地点へ向かう。夜間パートに向けてヘッドライトをサブからメインに交換。そのほか補給食の入れ替え、防寒着もザックに詰め込む。トイレも済ませてから2周目へと入った。f:id:massto0421:20211129012158j:imagef:id:massto0421:20211129011958j:image

【2周目】

体の疲労感はあまりないが、脚の疲労は隠せない。左側のハムストリングの張りと、右ひざの違和感が不安である。左側のハムが張ってしまうのはロングトレイルの傾向として把握出来ていたので、今回はその対策として「2run」という攣り防止用のサプリを持ってきた。春のOSJ新城でハムが攣って動けなくなった教訓である。右ひざは今夏の北アルプス縦走(上高地立山・室堂)で痛めて以来、整形外科に通って治療していた。ニューハレのテーピングを貼って予防していたのだが、思ってた以上に負担がかかっているようだ。何はともあれ、まだ問題なく走れるのであまり気にせずにゲレンデを登っていったが、鉢伏山からの下りで不安が現実となってしまった。右ひざの違和感が明らかな痛みを伴って走れなくなってしまう。脚のことを考えるとリタイアすべきだが、数ヶ月間KAMI100のために費やした時間と労力が水の泡となってしまう。それだけは避けたかったので、鉢伏山と高丸山の中間あたりでザックから緊急時用に携帯してたロキソニンを取り出し服用する。この判断が功を奏し、美方高原から痛みが軽減し徐々に走れるようになる。下りで遅れた分、上りでペースアップを図る。林道出会いまで来ると日は沈み、夜間パートに突入。それに合わせてヘッドライトを装着。夜間パートは好き嫌いが分かれるが、自分はわりかし好きな方だ。視界からの無駄な情報がシャットアウトされ、神経が研ぎ澄まされていく感覚が心地よい。練習するときも夜の方が淡々と走りに集中できる。気づけば兎和野高原のエイドに到着していた。ここで戴いたオートミールのおじやが絶品で感動。何より温かいものを食べられるのが凄く有難い。お腹も気持ちも満たされてエイドを出発した。f:id:massto0421:20211129012223j:image

2回目のとろ川山は、紳士そうなおじ様とお喋りしながら登った。喋った内容はあまり覚えてないが、会話のおかげで精神的な辛さは感じなかった。ハチ北高原と兎和野高原を結ぶ林道を再び引き返し、またもやゲレンデの急な坂道を下る。今度は無理せずに歩いて下った。2周目のタイムは6時間20分。序盤から失速したものの案外タイムを落とさずに走り切ることができた。S/F地点のエイドでコーラを戴く。コロッケも提供されてたが、胃がもたれそうなのでやめておいた。テントでバナナと塩豆大福を口に詰めて、3周目への準備を整える。気持ちは切れるどころか、段々とワクワク感が強くなっていった。f:id:massto0421:20211129012033j:image

【3周目】

相変わらず登りは快調。体感的には一周目と同じペースで登れる。夜になって気温が下がったおかげで心拍にも余裕がある。しかし平坦や下りになると脚のダメージが深刻でなかなか思うように走れない。少しでも躓こうものなら、脚に予期せぬ力がかかって攣ってしまうだろう。2周目同様、下りで走れない分は上りで巻き返し、なんとか最低限のペースを維持する。美方高原のエイドまで来たが、これまた1,2周目同様にスルーした。林道出会いまでの上りは、今まではずっと歩いていたが、3周目は所々ランも織り交ぜていく。完走できるのはほぼ確実だったので、なるたけ全力を出し切ろうと、このあたりでスイッチが切り替わった。しかし兎和野高原へと続く林道の平坦路は、しっかり走りたい区間だが、脚の疲労で思うように走れない。キロ7分くらいのペースで、止まらない歩かないことだけを守りながら、半ばゾンビ化しながら走る。兎和野高原エリアの最初の下りは走れたものではない。とにかく躓いかないように早足で下る。兎和野高原エイドの手前5キロ地点あたりで、これまた優しそうなおじさんに声をかけてもらい、その流れで併走する。奥野さんという方でレース後にSNSを交換した。3周目はほとんど走れず、若干気持ちが切れかかっていたが、奥野さんの後をついて行ってるうちに次第に脚が軽くなっていくような錯覚にかかる。それにしても前を走る奥野さんはレース終盤にも関わらず足取りが軽い。兎和野高原エイドの手前2キロで付いていけなくなり、引っ張ってもらったお礼を言って別れる。エイドに倒れこむような形でピットイン。再びオートミールのおじやをいただく。相変わらず美味しい。温かいものを食べていくらか元気が出てきた。なによりゴールまであと約10キロという事実が気持ちを奮い立たせた。瀞川山の上りに差し掛かると、一気にギアを変えて加速する。次々と前方のランナーを抜かしていくのが面白くてしようがない。体力も脚も全く辛くない。最後の最後で一時的なランナーズハイに入っていたのだろう。先ほど別れた奥野さんも上りで抜き返した。ハチ北高原に接続する林道についた。気持ちは切れてないが脚は使い果たしていた。気持ちでどうこう出来るレベルではない。そうは言っても走らないことにはゴール出来ないので、とりあえず走る。もはや歩きと大差ないスピードだが、形だけも走ることに意味があるのだ。先ほど抜かしたランナーさんに次々と抜かされていく。ああ待ってくれと懇願したいところだが、必死なのは自分だけではない。それぞれ自分の今出せる力を絞り出している最中なのだ。そんなランナーさんを見ていると、自分も頑張らねばと思えてくる。他人との戦いではなく、自分との闘い。ここにトレイルランの魅力と真髄が詰まっているような気がする。やがて最後の難所、ゲレンデの下り坂に入る。もはや歩くよりも転がったほうが速い。膝が痛くてさぞかし不格好な歩き方になっていたに違いない。アスファルトから跳ね返ってくる衝撃が1歩1歩重みを増して、疲れ切った脚を容赦なく襲う。また後方から別のランナーさんがやってくる。かと思うとそれは奥野さんだった。ゴール手前で走ろうと声をかけてくださったが、全く走れない状態だったので先を行ってもらった。最後まで一緒に走れなかったのが悔やまれるが、やがてゴールゲートが目の前に現れると自然に笑顔がこぼれた。f:id:massto0421:20211129012803j:imagef:id:massto0421:20211129012258j:imagef:id:massto0421:20211129012102j:image

結果

1周目:5時間22分

2周目:6時間27分

3周目:6時間43分

レスト:42分

合計:19時間14分

総合順位:83位/378人中

クラス別:2位/7人中

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最後に

ハチ北観光協会さんはじめ、地元の方のご協力が本当に有り難かったです。宿から徒歩20分ほどの会場まで何度もバスを出していただいたり、レース中にいつでもランナーが体を癒せるよう温泉を解放してくださったり、至れり尽くせりでした。

また、レース中にお会いし励まし合ったランナーさんにも、この場を借りてお礼申し上げます。レース中に他のランナーさんとお喋りするのもトレイルランの醍醐味ですね。またどこかの山でお会いしましょう。

香美町最高!