茄子がままに

週末の山遊び、街遊び、自転車遊びのこと。ホームマウンテンは六甲山です。

西粟倉村とちくさ高原(2022/10/29,30)

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六甲有馬ヒルクライムに出てから自転車熱が再燃しつつあったこともあり、勢いでちくさ高原ヒルクライムにエントリーした。レースへのモチベーションはそこまで高くはなかったが、ちくさ高原の近くに以前から行ってみたかった西粟倉村があることに気づき、エントリーする決め手となった。西粟倉村を知るきっかけとなったのはTwitterでフォローしているハダさんという方の影響である。ハダさんは西粟倉村に在住しており、村の魅力や、村生活の様子などをSNSで発信されている。

西粟倉村は岡山県北部にある人口1300人ほどの村である。ここ数年で都市部から西粟倉村に移住する人や起業する人があとを絶たず、ちまたでは“奇跡の村”とも言われている。そうなった理由について詳細は割愛させてもらうが、ざっくり説明すると、村の森林に有り余っていた間伐材を商材として利用し、全国から注目を浴びるようになったのである。そのような興味深い背景を持つ西粟倉村に是非行ってみたいと前々から思っていたのである。

阪和線の最寄駅から乗り継いで上郡駅までやって来た。途中、相生駅山陽本線に乗り換えたとき、お気に入りのイエローの車両が来て興奮した。瀬戸内の太陽をイメージしたというこの車両を見ると、下関や呉に行ったときの思い出が蘇る。楽しかった思い出があるからこそ、このイエローに親近感を覚えるのかもしれない。
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上郡駅では近くに住んでいるMさんが出迎えてくださった。Mさんはお世話になってる自転車好房ラルプデュエズの常連さんで、自分がアルバイトしてた頃から大変お世話になっている。Mさんは「mimi屋」という名前で手作りのポーチやカバンといった雑貨をネット販売されたりもしている。ラルプデュエズの店頭ではMさんの作った自転車柄の布地のポーチやサコッシュなどが置かれており、自転車好きには好評だった。また、掬星台のリュックサックマーケットというフリマで一緒に自転車関連の小物をいっしょに販売したこともある。天気はあまり良く無かったものの、お客さんやハイカーさんとの交流が楽しかった。
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上郡駅にやって来たのは実に5年ぶりのことだった。学生のころは、毎年4月に岡山国際サーキットで開催される「晴れの国 岡山4時間エンデューロ」というロードレースに参加しており、上郡駅まで輪行して前泊する宿まで15kmほどの山道を走っていた。久々の訪問だったがよく見慣れた風景はそのままで懐かしかった。ありがたい事にMさんから近くのパン屋さんのパンをいただき、お礼を告げて西粟倉村へと出発した。
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そもそも西粟倉村へ行くには最寄り駅の智頭線あわくら温泉駅まで輪行するのが手っ取り早いのだが、わざわざ50kmほど離れた上郡駅で下車したのは、秋が深まる西播磨の自然を堪能したいがためであった。その思惑どおり、ちくさ川にかかる橋の上から周辺の風景を見渡したとき、その美しさにため息を漏らした。秋晴れで紺碧にかがやく空、ちくさ川の清流、山々の深い緑。全ての要素において調和がとれたその風景は見事というほかなかった。
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ちくさ川沿いを北上していくにつれ段々と山あいの道になり始めた。やや鮮やかさに欠けるものの、紅葉もほどよく色づき始めていた。土曜日の昼下がり、車も人もほとんど通らない峠道を走る。その間は仕事も人間関係も将来の不安も何もかも忘れていられる。しまいにはペダルを回しているという感覚さえ無くなる。残るのは自然との一体感のみである。そんな恍惚のときを西粟倉村に到着するまで長い時間たのしめた。
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西粟倉村に着いてまず向かったのは「BASE 101%」というカフェ。ここで少し遅めの昼食をとることにした。このカフェは「西粟倉森の学校」という木材加工・販売会社が経営しており、冒頭に出てきたハダさんが中心となり2022年3月にオープンした。ジビエや周辺地域で取れた野菜などを使った料理がメニューに揃っている。今回は鹿肉と山椒のキーマカレーをいただいた。大変おいしかったです。
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お腹も満たされたので、今晩泊まる「あわくら温泉 元湯」に来た。名前のとおり天然温泉が付いているゲストハウスである。案内された部屋に入ると壁一面に野鳥のイラストが飾られてあり驚いた。野鳥好きには嬉しいサプライズでしばらく眺めていた。この川沿いに建てられたゲストハウスは立地も素晴らしく、もともと街灯が少ない西粟倉村のさらに奥まった場所にあるため、夜道を散歩していると夜空にはたくさんの星が見られた。
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宿の予約をするとき一番楽しみにしていたのは料理である。こちらでもジビエ料理と新鮮な野菜をいただけた。どの料理も絶品なうえに、西粟倉のヒノキを使ったクラフトビールがまた料理によく合ってお酒が進んだ。今回、旅行支援割引が適用されたのでかなりお手頃な値段で贅沢できたが、定価でもまた来たいと思えるゲストハウスだった。
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翌朝、3時半に起床し、作り置きしていただいてた朝食を電子レンジで温めて食べる。私と同じくちくさ高原ヒルクライムに出られる方が2人いらっしゃって、まだ電気が点かない食堂でご飯を食べながらお喋りを楽しめた。朝食を食べ終え支度をし外に出てみると、さすが山奥なだけあってかなり冷え込んでいる。身体を震わせながら自転車にまたがり10km先の会場へ向かった。自転車を漕いでいるといい感じに身体も温まってきだしたが、会場へ向かうまでの坂道が思いのほか急坂で、30Lのザックを背負いながらの登坂は大変だった。
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会場に付き受付を終えると、13km先のスタート地点へと下る。このダウンヒルが厄介で、ただでさえ寒いのに13km延々と下らないといけないので、スタート地点に着く頃には身体や脚が冷え切ってしまうのである。所々で休みながらゆっくりと下った。
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さてスタート地点についたものの一向にレースへのモチベーションは上がらず。今回の旅行のメインはどちらかというと、いや圧倒的に、西粟倉村を楽しむことがメインだったので、正直レースはどうでも良かった。レースの序盤はほぼ平坦路なのでそれなりのスピードで進んでいく。集団から千切れまいと必死に付いて行ったが、本格的なヒルクライム区間が始まると早々に千切れた。それからのヒルクライムは惰性で進んだ。あきらかな練習不足で最後の斜度15%ほどの急登区間に至っては時速10kmも出ていなかったと思う。レースが終わってリザルトを見ると、8年前(高専1年)に出たときのタイムから3分ほど遅くなっていて流石に落胆した。
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レースが終わりさっさと会場を後にした。当初は姫路駅まで自走する予定だったがどうにも気分が乗らず、西粟倉村へ引き返した。西粟倉村でやり残したことの一つに、ハダさんにまだお会いできていないことが心残りだった。もう一度BASE101%に行けば会えるかもしれないと思い、ふたたび来店。冷えた身体にコーヒーとチーズケーキの甘さが沁みた。店内に物販コーナーがあり、ふらふらと眺めていると後ろから「トレランされてるんですか?」と男性の声がかかる。振り向くとハダさんがいた。どうやら私が履いてるサロモンのトレランシューズを見ての発言だったようだ。思いもよらない展開にうろたえつつも「ハダさんですか?ツイッターでフォローさせてもらってます!」と伝えることができた。ご縁という言葉を実感するような出来事だった。
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最後の目的も果たし、思い残すことなく西粟倉村を出た。上郡駅まで少し寄り道をしながら自転車を走らせた。黄金色に輝く稲穂や、お地蔵様の見守る峠越えなど、帰り道もバラエティに尽きることはなかった。またいつかの秋に再び西粟倉村を訪れたいと思う。
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